公正証書の作成についての法律改正(公証人法改正)

改正公証人法

公証人法が改正になり、公正証書の作成について大きく変わりました。

公正証書作成についての変更点①

主に三点が改正され、第一に、公正証書作成の申し込み(嘱託)をインターネットを利用して行うことが可能となることです。
現行法では、特に本人確認のための印鑑登録証明書など原本を提出するために公証役場に出頭することが前提とされていましたが、改正法では、本人確認として電磁的方法によることが可能とり、必ずしも公証役場に出頭しなくともおおよいことになりました。

具体的には、本人確認をする方法は、マイナンバーカードに格納されている署名用電子証明書を、パスワードを入力してPDFファイルに埋め込んで(電子署名)行う方法などが考えられています。尚、従来通り印鑑登録証明書による本人確認も可能です。

公正証書作成についての変更点②

主な改正点の第二は、公正証書の内容に関する公証人に対する申述など、これまで関係者が公証役場に出頭して対面で行うこととされていた手続きについて、ウェブ会議を利用することが可能となりました。

例えば、身体が不自由で公証役場に行くことができない人の場合、離島や豪雪地帯など公証役場へのアクセスが困難な地域に住んでいる人の場合、DV等の事情により相手方と同じ場所で直接対面することなく離婚給付等公正証書を作成することを希望する場合、感染症予防のために入居・入院施設への外部者の立ち入りが許されない場合など、列席者の全部又は一部の人についてウェブ会議を利用したいというニーズに応える改正となります。

公正証書改正法では、ウェブ会議で公正証書を作成するための要件として、①嘱託人からの申し出と②公証人が当該申出を相当と認めることが必要とされています。具体的には、嘱託人からの申出、すなわち要請があったことが必要であす、ウェブ会議の利用は国民の利便性を高める観点から認められるものなので、これを利用するかどうかは公正証書の作成を嘱託する嘱託人の以降に委ねるのがよいという考慮によるものです。ただし、相手方がいる場合には、当該相手方(他の嘱託人)に異議がないときに限ります。例えば、金銭消費貸借契約公正証書で、貸主側がウェブ会議を希望したとしても、借主側がこれに異議を述べた場合は、貸主はウェブ会議を利用することはできないことになります。

通訳人は嘱託人の支援のために置かれるものあり、通訳を必要とする当該嘱託人の意向が尊重さあれるべきことから、相手方の意義がないことは要件とされていません。2番目の要件である公証人が相当と認めることとは、遺言公正証書について、遺言者の年齢、心身の状況や遺言の内容、嘱託に至るまでの状況等に応じて慎重に判断するということです。遺言公正証書では、遺言能力の有無が問題となることがおおいので、事後的に遺言能力の有無をふくめ、紛争になるおそれが多い場合には、ウェブ会議によらない方がよいことになります。そのような場合には公証人が実際に対面で遺言者の状況を確認することになります。また、ウェブ会議の危険性として、画面に映らない部分に第三者が隠れ、遺言さに支持をだしたり、営業を与えることが考えられます。

では、ウェブ会議で遺言公正証書作成が可能となる場合は、比較的年齢が若く、意思能力に問題がない遺言者の場合であって、信頼できる立会証人が遺言の自宅や病院等に赴いて画面の外に影響を及ぼしそうな第三者が隠れていないことを確認でくる場合など、限られた場合となるのではないかと思います。

公正証書作成についての変更点③

主な改正点の第三は、現在は、公正証書原本は書面により作成し、保存されていますが、改正法では、公正証書について、その保存・管理の合理化という観点等から、原則として電磁的記録をもって作成することとされました。書面に署名をすることがなくなったので、遺言公正証書の遺言者、証人の署名は電子サインになると考えられます。署名者がタッチペンや指でパネルにサイン(署名)をする形になると予想されます(詳細は法務省令で定められる予定です)

改正法において、遺言公正証書など、紙媒体の交付を求める方も多いと予想されるため、正本、謄本と同様の効力を有する書面を交付することを可能としています。

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