令和6年の民法改正の一つである「共同親権」
現行法では、離婚する際の親権は、父親、母親のどちらかの単独親権とされています。しかし、父母が離婚した後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが子の利益を確保する上で必要であるという認識が強くなってきたこと、また、国際的な動向についてもアメリカ、ドイツ、フランス、イギリス、スイス、イタリア、韓国等主要な国は共同親権を採用していることなどの理由で以前から改正の必要性が検討され、民法改正により共同親権が導入されました。
共同親権について改正民法ではどのように規定されているのか
「父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その双方又は一方を親権者と定める。」とされています。協議離婚でなく裁判離婚の場合は、裁判所は、父母の双方又は一方を親権者と定めるとされています。そして、改正民法819条7項では、裁判所が親権者を定めるに当たって考慮すべき事項が明示されています。
改正民法の定めは、父母が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが、子の利益の観点から重要であるとの理念を前提とした上で、離婚後の親権者を父母双方とするかその一方とするかにつき、個別具体的な事情に即して、子の利益の観点から最善の判断をすべきであるという考え方に沿ったものとなっています。まず、裁判所が離婚後の親権者を判断んするに当たっては、子の利益のため、父母と子の関係や父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならないとしています。これは父母の意見を考慮するとともに、子が意見を表明した場合にはその意見を適切な形で考慮することを含んでいます。
裁判所はどのような場合に共同親権ではなく、父母どちらか一方の親権とするのか。
裁判所はどのような場合に共同親権でなく父母のどちらかにするのかについて改正民法では、「父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるとき」と定め、具体的には①父又母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがある時としています。例えば父親が子にDVや虐待をする場合が典型です。また、父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な営業を及ぼす言動を受けるおそれの有無、親権者の定めについての協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるときが掲げられています。
離婚届の民法改正
現行民法では離婚届出にどちらが親権者となるか記載しなければならず、親権者が決まらないと離婚届出が受理されないことになっています。DV等があったりして早期に離婚したい場合に困りますが、民法改正では、親権者に関する協議が調っていなくても親権者の指定を定める家事審判又は家事調停の申立てがされれば、協議離婚の届出が受理されることとされています。
共同親権となると、なんでも父母が共同して決めなければならないのか
例えば子が緊急の手術を受けることになった際の同意など、子の利益のため急迫の事情がある時、子の食事や服装、通常のワクチン接種、習い事など監護及び教育にかんする日常の行為は子と同居している親が単独ですることができます。